また悲しい知らせだ。キング・クリムゾンやフォリナーの創設メンバーの一人である、イアン・マクドナルドが2月9日、癌のため死去した。享年75。
初めて『クリムゾン・キングの宮殿』を聴いた時の衝撃は今でもよく覚えている。1975年頃だったと思う。当時すでに『童夢』『セブンスソジャーン』といったムーディ・ブルースのアルバムで、メロトロンの凄まじさが僕の脳天を直撃していたが(だからこんなになってしまったのだ)、それでも『宮殿』の衝撃はけた違いだった。『21世紀の精神異常者』のような曲は今まで聴いたことが無かったし、『エピタフ』のメロトロンは、大胆さという点において、ムーディーズを凌駕していた。『ムーンチャイルド』のインプロは、多分僕が聴いた初めての即興演奏だと思う。
その後、プログレッシブ・ロックと呼ばれる音楽を多く聴いてきたが、メロトロンの大胆さ、即興演奏における色彩感覚やイメージの豊かさ、という点において、1969年に発表されたこのアルバムがいまだに僕の中では最高の作品だ。そして、その中心にいたのがマクドナルドである。
マクドナルドは、1996年に、スティーブ・ハケットのサポートとして来日している。この時は僕は行けなかったが、友人のIという画家が観に行って、「宮殿」が演奏されたのでたまげた、と言っていた。僕は後日、その時の映像をVHS(懐かしい!)で入手したのだが、メンバー紹介の時、マクドナルドに対し、ひときわ大きな拍手が送られていたのが印象的だった。当日足を運んだIのようなファンは、マクドナルドが果たした大きな貢献を、きちんと理解していたのだ。もちろん僕も同じ気持ちだった。
ピート・シンフィールドも悲しんでいるだろうな。
素晴らしい音楽を有り難う。安らかに眠ってください。