Rocco's log ~プログレ好きの警備員 trader with 社労士~

社労士試験、投機関連(大阪金先物が中心)その他諸々。このブログのトレードに関する箇所は、僕の勝手な相場観を書いています。価格も僕の予測に過ぎません。内容の正確さに最善は尽くしていますが、一切の責任を負うものではありません。売買は必ずご自分の判断で行って下さい。また、記事中で氏名の敬称は原則として省略しています。ご了承ください。

『コロナ後を生き抜く 通説に惑わされない投資と思考法』(馬渕 治好著 金融財政事情研究会 刊)読了。

最近はCDA関連の仕事で忙しく、前回の記事から大分日が開いてしまった。

その間に、大竹センセイの行動経済学の本など、読んだものもあるのだが、如何せん大竹本は発行から時間が経ちすぎていた。この手の本は、使われている資料など、あまり時間が経っていると新鮮味が失われ、読む気がしなくなってくる。その意味では今回取り上げる本は、読む時期としては、ギリギリセーフと言う感じだろうか。発行は2020年12月。オミクロンの大流行やウクライナ問題より前の発行なので、若干時代を感じるが、今ならまだ読める(読んで違和感はない)。

本書は表題のごとく、様々な通説に対し、著者独自の視点から異論を展開している。面白かったのは、2020年3月の株価の暴落についての著者の解釈だろう。

誰もが、この時の株価暴落の原因を「コロナ」と断定している(P50~51)。しかし馬渕は、この時の暴落の主因は「コロナ禍」というブラックスワンではなく、2匹の灰色のサイだと言う。最初の灰色のサイは、2020年3月時点ですでに極めて割高になっていた米国株価(P55~56)、2匹目は、すでに2019年時点で企業収益が悪化していたにも拘わらず、いつ下落してもおかしくなかったのに、米株上昇に吊り上げられていった日本株、だ。

ちなみに「ブラックスワン」とは「想定外の出来事(P47)」。「灰色のサイ」とは「誰もが知っている要因」を指す。「サイが灰色なのは当たり前だ(P55)」。つまり、前々から存在は知られていたが「そんなこと知っとるわ」として軽視されていた要因が、コロナと言う引金が引かれたことによって大暴れしだしたのが2020年3月中旬までの株価暴落(あくまでも「本尊」はサイ)。そして同月下旬以降の日米株価の急速な戻りは、二匹のサイが暴れ終わったから(つまり、上記の要因が解消されたから)、となる。この解説は腑に落ちた。この時の暴落を「コロナのせい」と決めつけてしまうと、まだ「コロナ禍」が消え去ったわけでもないのに、現在の日米株価が既に「コロナ禍」前を上回ってしまっていることについての説明がつかない。

それから、株価指数先物などをやっている向きには、PBRから見た絶好の投資タイミングなども示されている(P124)。わかっている点もあるが、再認識させられる点も多々ある。そんな本だった。

著者略歴を見ると、日経新聞のコラム「十字路」にも書いているという。日経は面白い新聞ではないが、このコラムは読む価値はあった。本書も目立つ本ではないが、くだらない投資本の何倍も読む価値はあるように思えたな。