Rocco's log ~プログレ好きの警備員 trader with 社労士~

社労士試験、投機関連(大阪金先物が中心)その他諸々。このブログのトレードに関する箇所は、僕の勝手な相場観を書いています。価格も僕の予測に過ぎません。内容の正確さに最善は尽くしていますが、一切の責任を負うものではありません。売買は必ずご自分の判断で行って下さい。また、記事中で氏名の敬称は原則として省略しています。ご了承ください。

『長生き地獄にならないための老後のお金大全』(森永卓郎 著 KADOKAWA刊)読了。

「長生き地獄」とは嫌な言葉だが、「老後2000万円問題」で明らかになったように、現役世代のほとんどは、一定以上の長生きはリスクととらえて対策が必要だと思っているのではないか。本書はそのような問題意識を持つ世代に読んで欲しい本だ。

本書は、50代になって、将来に不安を感じるようになったオジサンと、森永の対話形式で話が進んでいく。そのためか、240ページくらいの本なのに、さほど苦も無く読めた。しかし、内容が薄いわけではない。例えば、医療や年金の直近改正にとどまらず、近い将来に行われる重要な改正も紹介されている(P118以降、158以降等)ので、プロである社労士が読んでも、よく勉強しているな、と思う。

森永は割とあくが強く、時の体制に対しても是々非々で論じるので、うっとおしく感じる読者もいると思う。先日聴いたセミナーの先生も森永を酷評していた。でも、それはそれ。著者やその著作に対する判断は、自分で著作をまず読んでみてから行うのが大前提だ。そういう意味では、まだ森永の著作を読んだことが無い人にとって、本書は彼の考え方を知る良い素材だ。もちろん、内容に100%賛同する必要もない。僕も、森永の言う数々の利点は認めるが「トカイナカ」に住みたくはない。住むなら断然都会だ。だが、本書を読んで、こう言う指向性の人もいるだろうな、と想像し、理解することはできる(P170以降)。

他にも、実用的かつ興味深い統計資料などが掲載されている。僕が興味を持った箇所と併せていくつか紹介しよう。

1 2019年財政検証の内容:2052年には夫婦2人のモデル年金は月12.9万円、と言うのが最も悲観的なケースだが、これは国の想定の中にもある(P17以降)

2 繰上・繰下げ受給状況:2020年で、繰上受給率は0.5%、原則受給率は98.5%、繰下げ受給率は1.0%。政府は繰下げ受給を推奨しているようだが、実際の割合はこんなもん(P42)。日本共産党の宮本徹議員が明らかにした、75歳受給を選択したときの損失についても触れている(P34)。

3 生産性と仕事の楽しさは反比例する(P46  いいじゃんいいじゃん=僕の感想)

4 国年受給者の理想的な収入構造(P58 これを見ると気が楽になる=同)

5 セルフメディケーション税制の有効活用(P93以降「安易に病院に行くのではなく、市販薬で病気を治そうとする人を税制面で優遇するもの」と言う説明は腑に落ちた。)

6 バブル崩壊は「シラーPER」で予測できる(P126以降)

7 仮想通貨は投資ではなくギャンブルと考えれば優秀な手段(P150以降)

8 後期高齢者の医療費負担(P158以降)

9 「いざとなったら民間の介護施設も(P162以降)」では、森永の父親介護の経験を踏まえて書かれており、分かり易い。

10 「家系図を作ってみよう(P210以降)」では、家系図作成の専門会社の話が出てくる。こういう会社もあるんだな。

11 相続(P216以降)については、配偶者居住権、預貯金の払い戻し制度、義理の親の介護が報われる特別の寄与等が、最近の法改正を踏まえて、これも分かり易く書かれている。

最初にも書いたが、本書は50歳前後の人が老後の対策として読むのが最も適していると思う。しかし僕が今読んでも得るところはあったな。

良書だと思う。(敬称略)