Rocco's log ~プログレ好きの警備員 trader with 社労士~

社労士試験、投機関連(大阪金先物が中心)その他諸々。このブログのトレードに関する箇所は、僕の勝手な相場観を書いています。価格も僕の予測に過ぎません。内容の正確さに最善は尽くしていますが、一切の責任を負うものではありません。売買は必ずご自分の判断で行って下さい。また、記事中で氏名の敬称は原則として省略しています。ご了承ください。

『お米の先物市場活用法』(三次理加 著 時事通信社 刊)読了。

ちょっと長いが副題には「未払いリスクを回避できる 新たな販売先を確保、仕入れ先を拡充できる! 価格変動の不安が無くなる!」とある。

ところで、コメの先物取引についてはすでに、2020年5月16日、2021年8月8日の本欄で書いた通り、廃止となった。

2011年にコメ先物の試験上場が始まってから、市場参加者の一人としてマーケットを見てきたが、その中で、本書の存在を知ったのは2~3年前だ。

著者の三次も書いているように、本書はよくある「こうすれば儲かる」系の本ではない。当業者がコメ先物市場をどのように利用すればよいのか、についてケーススタディを交えながら詳説したり、コメを中心とした先物取引の仕組みの解説及び世界最古と言われる我が国における先物取引の歴史を紐解いたり、取引に係る税務的なことやトラブルになる前に知っておきたいことなど、その内容はかなり幅広い。

印象的な記述をいくつか紹介しよう。

試験上場が4回も繰り返された挙句に廃止になってしまったわけだが、その理由の一つについて筆者は「~また、コメの価格決定権を失いたくない米生産者団体の反対や農業票に伴う政治的な要因もあったようです」(P77)とかなり控えめに書いている(筆者の三次は経産省産業構造審議会 商品先物取引分科会委員を務めたこともある)が、理由はほぼこれに尽きるだろう。また「国産米と輸入米の価格差は2.5~4倍程度~消費者の立場から見れば、高いコメを買わされていることになります」(P213)とも書いている。

本書ではこれくらいだが、日経新聞電子版によると「国内のコメ需要は年間700万トン程度」で、はっきりとした減少傾向を示している。にもかかわらず「コメ卸などへの売値(相対取引価格)はコロナ前までは継続的に上昇していた。これが最終的には小売価格の上昇圧力となる」として「需要減でも価格が上がる局面も」と言うタイトルでグラフ付きで紹介している。普通は「需給が緩めば相場は下がるはずだ」がな(2022年4月14日 コロナ禍が問うコメ相場 ㊤)。

他にも、スパン証拠金制度の特徴(P131~2)、商品先物における売買単位である「枚」の意味(P122~3)、「お江戸のフィンテック、米価伝達は新幹線より速かった!」(P283~5)、大連商品取引所へのジャポニカ米上場の衝撃(P87~94)など、面白い記述満載である。

「おわりに」の最後には「『堂島』の米先物取引が世界に冠たる米指標となることを祈念して」(P294)の一文がむなしい。本書は労作であるだけに、なおさらだ。