Rocco's log ~プログレ好きの警備員 trader with 社労士~

社労士試験、投機関連(大阪金先物が中心)その他諸々。このブログのトレードに関する箇所は、僕の勝手な相場観を書いています。価格も僕の予測に過ぎません。内容の正確さに最善は尽くしていますが、一切の責任を負うものではありません。売買は必ずご自分の判断で行って下さい。また、記事中で氏名の敬称は原則として省略しています。ご了承ください。

『不謹慎な旅』(4)

Ⅴ 生命と悲しみの記憶

  ササニシキはなぜ消えた<1993年の米騒動>(P216~221)

 作況指数74、東北地方の太平洋側は、軒並み20~30の数字が並んだ、とある。冷夏、日照不足、豪雨などで戦後最悪とされた大凶作の年だ。覚えている人も多いだろう。

 スーパーなどの米のコーナーでも、コシヒカリはよく目にするが、ササニシキは、見なくなったな、と思っていた。読んでみると、このときの大凶作が原因のようだ。天候に左右され、デリケートなササニシキがより強くこの影響を受けたのか。

もう一つ、翻弄されたコメが、タイ米(インディカ米)だ。食感が馴染めない、マズいという悪評が立ち、売れ残った大量のタイ米を不法投棄したり、産廃処理したり。タイでは日本に対する激しい反発が起きたという。当時のタイは、世界最大の精米輸出国だ。タイの当局者は「日本が継続して買ってくれれば、我々もジャポニカ米を作る」と言っていたのを今でも覚えている。そりゃそうだ。向こうもビジネスとして輸出しているのだからな。実は世界レベルではジャポニカ米はマイナー種で、インディカ米が圧倒的だという。現在ではタイ米の食べ方などに対する理解が進み、我が国でも徐々に浸透してきてはいるようだ。

しかし、少子化と食生活の多様化で、コメの消費量は年々減少の一途。今では年間700万トン程度と、大凶作で大騒ぎしたこの年の生産量を、とっくに下回っているらしい。

こんな状況だと、ササニシキのブランド復活など無いだろう、とみんなが思うだろうが、「あっさりしていて寿司ネタの味を邪魔しないコメ」ということで、ササニシキで握り続ける宮城県白石市寿司店「鮨敏(すしとし)」が紹介されている。

ということで、4回にわたった本書紹介の旅は、この寿司店で終わることにする。食べたくなってきたよ。

 

本書は多くの人に勧めたい。「週間金曜日」に連載されていただけあって、スポンサーや大資本におもねず、書きたいことを書く、と言うスタンスを貫いている。今回紹介しなかったが、山下虎雄のトンデモ話(P136~)や終戦記念日の定番になっている、二重橋に向かって頭を垂れる民衆の写真等が予定稿であったり、事前撮影されたものだったり、という事実が明らかにされる(P154~ 2009年の朝日新聞の紙面検証)箇所などは、日本人なら必ず知っておきたいエピソードだと思う。