本作は1970年代後半~1980年頃の永ちゃんのライヴ映像をふんだんに取り入れたドキュメンタリー。観たのは初めて、だったと思う。
永ちゃんはキャロルの頃から知ってはいた。きっかけは、1972年の秋くらいだったと思う。当時中2だった僕は、その頃ちょっとだけ話をしていた同じクラスの女子と電話で話していて、彼女がキャロルを聴いている、と言ったのだ。本欄でいつか書いたが、その頃の僕の興味は、欧米のシンガー・ソングライター、特に好きでよく聴いたのは、キャロル・キングとギルバート・オサリバンだった(まだ英国のロックはあまり聴いていなかった)。電話で話していて僕は「キャロル違い」だな、と思ったな。永ちゃんのキャロルとキャロル・キングは全然違うもんな。
彼女は、バレーボールの強い私立高校に進学し、進学後に一度だけ会った記憶があるが、その後に話をした記憶はない。理由は特になかったと思う。
その後、2歳年下のいとこの友人とよく話すようになったが、彼が永ちゃんのファンだった。二人で「長い旅」について話したことがあったので、多分、1970年代の後半だったと思う。キャロルは解散し、永ちゃんはソロになっていた。『成りあがり』の刊行もこの頃で、僕は、少し遅れて出たこの本の文庫版を購入して、すぐに読破(と言ってもすぐ読める厚さだ)し、今でも持っている。
でも、当時は永ちゃんのライヴに行きたいとは思わなかったな。ファンの指向性が自分と違うこともわかっていた。
時代が下って名古屋に住むことになったとき、住まいの近くのレインボーホール(現ガイシホール)で、毎年暮れに、永ちゃんのライヴがあった。最寄り駅が僕の良く利用する駅だったので覚えているが、永ちゃんのコンサートのある時は、駅を降りる客のいでたちと雰囲気ですぐにそれとわかったね。
本作でも名古屋でのライヴ映像が出てくるが、面白いのは、1時間ちょっと経過したところで、ライブ中にアリーナ席の観客どうしがケンカを始め、それに気づいた永ちゃんが「今日はオレの30歳の誕生日なんだよ」と言いながらなだめるシーンがある。大体、コンサートの最中にケンカが起きる(しかもアリーナ席だ)、と言うこと自体、他のアーティストではまずないだろう。貴重な映像だよ。
最後は「長い旅」で終わるが、僕はこの曲の存在を忘れていた。この映画を観て、いとこの友人のことを思い出した。クセのある奴だったが、今どうしているだろうか。