Rocco's log ~プログレ好きの警備員 trader with 社労士~

社労士試験、投機関連(大阪金先物が中心)その他諸々。このブログのトレードに関する箇所は、僕の勝手な相場観を書いています。価格も僕の予測に過ぎません。内容の正確さに最善は尽くしていますが、一切の責任を負うものではありません。売買は必ずご自分の判断で行って下さい。また、記事中で氏名の敬称は原則として省略しています。ご了承ください。

『ディズニーキャストざわざわ日記』(笠原一郎 著  三五館シンシャ 刊)読了

日記シリーズを読むのはこれで4作目になる。今まで読んだ作品(交通誘導員、不動産営業、コールセンター)は、多かれ少なかれ、僕がこれまでついた職業と接点があった。しかし今回は、そのような接点はない。東京ディズニーリゾートに興味があるわけでもない。「ランド」には何度か行ったことがあるが「シー」が開園してからは一度も行っていない。

ま、最も興味があるのはスタッフ(読者もご存知の通り、ディズニーでは「キャスト(出演者)」と呼んでいる)の働き方だな。本書は「現場からの実態報告」として「ありのままの」姿が紹介されている、という触れ込みなので読んでみた。

 

ところで、著者の笠原は、大卒後、キリンビールに入社し、福井支店長まで務めた人物だ。しかし、当時の上司である北陸支社長に疎まれ(P52)、結局、57歳で早期退職に応じたという。60歳から年金が受給できる年齢のようだし、大企業だから、当然、退職金の割り増しも期待できるのだろう。大半が準社員と言う名の非正規雇用で、給与水準も高くはないが、自宅から近いところで楽しく働きたい、ということでディズニーに応募したらしい。職種は「カストーディアルキャスト」。何だろう、と思っていたら、清掃スタッフだという(P55)。いやはや、横文字カタカナが好きな企業ではある。

 

著者によると、ディズニーについて書かれた本は、ビジネス物と感動本が多いという(P3~)。特に後者については「優等生の模範解答」的なことしか書かれておらず、「読んでいて、お尻がむずがゆくなる」ものもあるようだ。どうも、本書執筆のきっかけは、この辺りにあるようだ。

 

僕はディズニー関連のビジネス本や感動本など読む気はしないが、これらの著者も「ディズニー」という他人のふんどしで相撲を取っている(儲けている)わけだ。笠原もその辺はわかっているようで、8年に及ぶ自身のディズニーキャストとしての経験から、これらの感動本と実際との相違を、本書でも時々書いている。一例を挙げよう。「危ない、危険」というワードはゲストが不安をいだくかも知れないのでNGワード、だと書いている本があるらしい(P44)。だが笠原はこの言葉をよく使っていたし、使ったことでSVに注意されたこともない、という。

 

笠原はまた(前職とは異なり)、ディズニーでは「褒める文化」が浸透していた、と書き、その具体例として「ファイブスターカード」を挙げる。これは、キャストの素晴らしい行動に対し、それを見た社員が、称賛ポイントを記したカードを手渡す、というもので、実利にもなるようだ(P196)。他にも社員のモチベーションを挙げる施策を紹介しているが、ひと工夫すれば一般企業でも使えそうだ(P196~)。

 

本書には、一スタッフとしてのディズニーに対する評価が率直に綴られている。8年の就労経験から来る筆致に独りよがりな思い込み等はほとんど感じられない。その意味で、オリエンタルランドと言う企業体に対する優れた評価書であるともいえるだろう。「今年は(何回)ディズニーに行こうかな」と考えている人にとって、行く前に読んで損はない本だと思う。