30年近く個人事業主として事業を続けてきたが、税務署とは意識的に関わらないようにしてきた。別に不正をしている訳ではない。それどころか毎年、税理士の厳しい指摘を受けつつ、きちんと申告している。それでも近づきたくないのは本能的に避けていた、としかいいようがない。本書を読んで僕の本能は正しかったことを確認できた。半面、数字にしか反応しない無機質な人間の集団と思っていた職員の人間くさい部分にも触れることができた。
ところで、税と僕の専門である社会保険とは隣接の関係にある。僕が社労士であることを知っても、医療保険や年金の質問をされることはあまりないが、税金とくれば話は別だ。著者の大蔵も、結構色々な人から「歩くQ&A」(P17)扱いされたようだ。ったく、日本人は水と安全と相談はタダ、という意識がまだまだ強いねぇ。
本書の魅力の一つは、外からはなかなか分かりにくい税務署の仕事について、事細かに書いている点だろう。税務署の仕事が、法人課税、個人課税、資産課税、徴収の4部門に分かれている(P63)ことなど、本書で初めて知ったよ。それから著者の大蔵は、税務大学校での専門官基礎研修時に、日商簿記2級の試験を受け、落ちている。僕は、税務署で働いている人たちは皆、簿記2級くらいはもっていると思っていたが、そうじゃない人もいるんだな。
3章では大蔵がうつ病で休職する記述(P146)があるが、僕などこの件を読んで、公務員の好待遇だけが印象に残った。「休職期間が3か月目に入り、それまで手取り25万だった給与が18万に減った(P151)」「復帰は半日勤務(08:30~12:15)からのスタート(P153)」など、民間企業に勤めている読者の中には想像するのが難しい人もいるのではないか。
P162には再任用職員(60~65歳)という制度が出てくる。土日以外に勤務不要日を1日選べる制度のようだが、水曜日をそれに充てるのが意外と人気のようだ。自分と比べてしまったよ(今の僕の警備員としての勤務は水土日で、週休4日制。もっとも、他の3日も仕事のようなものだが)。
宝くじで10億当たったらどうする? なんてことが話題になる職場でもあるらしい(P32,193,204)。公務員なので株や先物をしている者も多いと思うが、そういう話は出てこない。この辺は著者の指向性の問題だろう。ま、こんなことを書くと著者に申し訳ないが、全体的な読後感として、いかにも規格品的な「まとまった感」の強さが残った一冊だった。
