rocco's log ~the 社労士 trader~

社労士試験、投機関連(大阪金先物が中心)その他諸々。このブログのトレードに関する箇所は、僕の勝手な相場観を書いています。価格も僕の予測に過ぎません。内容の正確さに最善は尽くしていますが、一切の責任を負うものではありません。売買は必ずご自分の判断で行って下さい。

ジョエル・ホイットバーン死去(享年82)

死因は公表されていないが、6/14に亡くなったようだ。

ホイットバーンは米国のチャート研究家。チャートと言っても、株や先物のテクニカルチャートのことではない。音楽のヒットチャートの方だ。このブログにも時々、ロックを中心とした音楽ネタを書くが、その時に併せて、曲のチャートアクションを書いているのを読んだ人もいると思う。その元ネタは大体この人の資料だ。より正確には、かまち潤氏の訳で音楽之友社から『ビルボード・トップ10ヒッツ』の書名で全3巻のシリーズものとして出ていた。でも、最近は書店の音楽書コーナーに行ってもどこにもないので、絶版になっているかも知れない。

 

僕はこのシリーズの2巻まで持っている。僕の洋楽歴は1970年代を中心として、その前後5年くらい。つまり、1960年代中ごろからの約20年、と言うことになる。でも、このうち、後半の10年ほどは、以前にも書いたように、プログレを中心としたロックに毒された時代なので、いわゆるヒットチャートからは遠ざかってしまった。『ビルボード・トップ10ヒッツ』の第3巻を買っていないのも、そのためだ。でも、ここ10年ほど、あるいはもっと長い期間になるか、未読の第3巻を読みたくなり、色々と探している。中古を通販で買うのは簡単だが、程度に結構差があるので、出来れば中古でも、店頭で実物を見てから買いたいのだ。

 

この3冊は、1958年から始まるビルボードのHOT100を、この年を起点にして、ほぼ10年ごとに分けて、トップ10に入った楽曲の週ごとの順位を掲載している。だから第3巻には、1978~88年頃の曲が載っている。この頃になると一曲20~40分(あるいはもっと長い)と言った、クラシック音楽のようなかつてのプログレは衰退し、バンドの連中も4分程度のポップな方向に踏み出してきた。この流れの中で、チャートのトップ10に入る曲も何曲かあったはずだ。覚えている限り挙げると、

『ヒート・オブ・ザ・モーメント』(エイジア)

ロンリー・ハート』(イエス

『ユア・ワイルデスト・ドリームス』(ムーディ・ブルース)

『アナザー・ブリック・イン・ザ・ウォール・パート2』(ピンク・フロイド

こんな感じかな。フロイドやイエスの曲は、チャートの1位になっている。

 

それにこの第3巻の時期は、僕が学校を卒業し、就職し、その後、何度かの転職を経て、社労士試験合格を目指して勉強を始める、その直前の時期と重なる。人は曲を通して、その時の自分を振り返ることもあるだろうが、ホイットバーンのこの3冊は、自分にとってそういう役割を果たしてくれる本だ。そう考えると、やはり2冊ではダメだな。第3巻を探そう。

 

ご冥福を祈ります。

『次はこうなる』(市岡繁男 著 ICI.出版 刊)読了。

副題に「グラフで読み解く相場の過去、現在、未来」とあるように、1500年代のイタリア・ジェノバ金利推移から現在まで、金利、為替、株、商品など、様々なデータをグラフ化したり、チャート化したりして、章ごとに設定されたテーマに則り紹介している。本書自体は160ページ程度で、分厚いわけではないが、読みごたえと言う点ではたっぷり。読後に満腹感を味わえることは間違いない。

人間、満腹になればたいていは眠くなる。しかし、本書の内容はそれを許さない。その意味では読者を選ぶ本、とは言えるだろう。多数のチャートやグラフと本文を照合しながら読む必要があるので時間はかかったが、個人的には得るところが多い本だった。

本を読むときは、まず、著者はどんな人か、肩書や経歴紹介からあたることも多い。現在の著者の肩書は「相場研究家」。金融機関のストラテジストやチーフ・アナリストといったサラリーマンではなく、現在は一匹狼である。サラリーマンの相場評は、経済番組やニュースなどでよく耳にするが、結論に至るまでに幾つもの前提条件が付いたり、結論として何を言いたいのか不明瞭なこともある。

その点、著者は明確だ。本文中の例をいくつか挙げる。

1 長期金利が520週MAを上回ったり、原油価格が200日MAを下回ったりすると、株価は急落する(P17、117~122)。

2 家計消費全体に占める無職世帯の割合は3割もある(P74~5)。高齢化によりこの割合が増えているのが、消費減少の一因。

3 家計可処分所得が最低限まで落ちたので、主婦や高齢者が働き始めた(P77)。これについて筆者は、2014年の消費増税の裏の目的は、生産年齢人口の減少に対する対処だったのか、、、と冗談とも本音ともつかないことを書いている。

4 日経平均先物は夜間に上昇するので、16時半に買って翌朝6時に売るべし(P95~6)。

5 外貨準備は米国債から金にシフト。特にロシアの金準備増強が凄まじい(P145~6)。

6 主食が高騰すると動乱が起きた(P160~1)。欧州ではフランス革命、我が国では、天保の大飢饉1833年)や米騒動(1918年)。

本書の発行は2021年12月。ウクライナ戦争の前だが、特に上記5,6を読むと、深く納得すると同時に、この戦争が長引いた場合、食糧やエネルギーがきっかけで新たな動乱が派生的に連鎖しまいか、とても心配になる。そんなことをただ何となく、ではなく、小麦の価格と長期金利の水準がどの程度になれば、その可能性が現実的になるか、そんなことまで考えてしまう本だった。

 

久しぶりに投機の話。

継続的に投機は行っている。本欄には書かなくなってしまったが、依然として「デイトレード」など、投資・投機関連のグループには入ったままなので、これからも、時々は書いて行こうと思う。

 

今月に入ってからは、大阪金先限6/1の10時台の上昇に乗って+4円。ただ、この時はまだ、価格は7600円の手前だった。値が動いたのは6/1の21時以降。しかしこの時は仕事で外出していて、トレードできなかった。23時半過ぎに帰宅してもまだ上昇は続いているように見えた。そこで買い参入し、零時をまたいで+4円獲得。この時は仕事の疲労もあり、トレードは1回きり。朝起きてチャートを確認したところ、その後も上昇を続け、7700円台に乗せていた。長くゴールドの現物と先物をやっているが、いつもながら動き出すと速い。

 

ところで、執筆や質問対応のほか、上記のように週に何回か働いて、定収入を得ている。現在の収入は、就労収入・年金収入・投機収入、主にこの3つだ。巷には、若いうちに投機で財を成し、早期リタイアを勧める本や、それを達成したと称する人の本がいくつも出回っている。しかし就労は、人間関係の維持や、健康の維持(運動)という面から見ても、適度に行う分にはプラスになる。あくまでも、適度に、だが。

 

還暦を過ぎて、老齢年金を受給するようになった。現役世代の中には、最初から、公的年金には頼れない、と決めつけている人もいるようだが、公的年金はバカにならない。例えば、月12万円でも、年金を65歳から85歳まで受け取るだけでも累計2880万円になる。それに我が国は、1961年以降、国民皆年金制度を維持しているが、年金債務のデフォルトは一度もない。最近はイデコなどの企業年金も充実してきているので、現役世代はこれをフル活用したいところだ。

 

これらにプラスして、投機収入と言うことになる。投機は上手くすれば、これだけで桁違いの利益を手にすることができる反面、しくじれば、せっかくの就労収入や年金収入に食い込んで、これらの合計額に対してマイナスの作用を及ぼしかねない。だから、投機は、やらないという選択も一法だ。しかし、上手くやれば上乗せが期待できることも事実。今の自分は、無理のない程度にやろう、と心がけているが、その按配が難しい。まだ練習の途上だな。

 

話がそれたが、6/2日本時間の大阪金は、7700円を下回る時間が長かった。食事や買い物で外出したが、14時過ぎに帰宅すると、上方向に動き始めたところだったので、14時半過ぎに買い参入し、ここでも+4円。昨日から今日にかけては、就労もこなしながら計+12円。良い方向に流れているので、これを大切にしたいな。

『1970年代のプログレ~5大バンドの素晴らしき世界~』(馬庭教二 著 ワニブックス 刊)読了。

1959年生まれで、中学2年から、イエスの『危機』がきっかけでプログレを聴き続けてきた著者の、プログレ遍歴をまとめた本。僕も1958年生まれで、ほぼ同年代。中2の時に初めてプログレを知った、と言うのも同じだ。ただし、僕の場合はイエスではなく、ムーディ・ブルースの『セヴンス・ソジャーン』。

本書には、著者が1973年4月に初めて『危機』を聴いた時のことが、昨日のことのように書かれている(P40)。僕が『セヴンス・ソジャーン』を初めて聴いたのは1972年の11月頃なので、ほぼ同時期だ。しかし、異なるのはプログレに接するきっかけかな。著者はNと言う友人(より正確にはNの兄)を介して聴かせてもらったのに対し、僕はひょんなことから一人でこの世界に入ることになった。当時僕はキャロル・キングのファンで、この時期には彼女の第4作目『喜びは悲しみの後に』が発表された直後だった。このアルバムは本当に素晴らしく、ビルボードのアルバムチャート1位は間違いない、と思っていた。ところが2位どまり。その時に1位にいたのが『セヴンス~』だった。興味本位で「どんな音楽なんだ」と思って買って聴いてみて、打ちのめされたわけだ。だから、キャロル・キングを聴いていなければ、ムーディ・ブルースを聴くことはなかった(少なくとも何年かは遅れた)と思う。こんなことを思い出してしまうほど、著者は僕と似た体験をしている。僕がプログレを友人と一緒に聴くようになるのは高校に入ってから。自由が丘に住んでいたO君や、世田谷に住んでいたI君の家によく行き、ときには泊りがけで聴き漁った。O君はピンク・フロイド、I君は僕と同じでムーディ・ブルースをよく聴いていた。そして僕を含めた3人に共通していたことは、キング・クリムゾンには一目置いていたことだ。

ジェネシスは5大バンドの中では最も後発だ(生年は皆、1950~51年)。著者はアルバム『月影の騎士』をジェネシスの最高傑作、と評しているが(P231)、同感。僕がこのアルバムで凄いと思ったのは、フィル・コリンズのドラミングだ。所収の「シネマ・ショウ」を聴いてみてほしい。

ELPについては、作品の多くがオリジナルではなく、クラシックを題材としてそれをロック化したものであり(その代表が『展覧会の絵』)、他の4つのバンドと同列に評価することはできない、と言う意見に対し、著者は反論している(P97)。プログレの黎明期に「ロックとクラシックの融合」と言うフレーズが良く使われた(P95)。その典型が、1967年のムーディ・ブルース作品『デイズ・オブ・フューチャー・パスト』だ。「人の一日」をテーマに各メンバーが作品を持ち寄り、全編にわたってロンドン・フェスティヴァル・オーケストラと共演している。つまり、自分たちが作った曲をオーケストラと共に演奏するのが代表的な「融合」のカタチであった。これに対しELPは真逆のアプローチをとった。クラシックの原曲をロック・トリオで編曲し表現する(P97)。これはこれで面白い。そもそもこのような音楽的挑戦に禁忌はないだろう。

本書は他にも、興味深い記述が沢山ある。一部を紹介しよう。

メロトロンを使わなかったキース・エマーソンの、メロトロン評(P160)。

⇒酷評である。

ビル・ブラッフォードのイエス脱退、キング・クリムゾン加入の理由(P184)。

⇒緻密なスタジオ作業から解放されたかったようだ。

ピンク・フロイドというグループ名の由来(P187)。

⇒ピンク・アンダーソン、フロイド・カウンシルと言う二人のブルース・ミュージシャンからとった。命名シド・バレット

最後に、ジェネシスに参加する前のハケットが当時在籍していたバンドが空中分解し、苦境にあったときに、イアン・マクドナルドが「君のギター・プレイはとても良いよ」と声をかけた、というエピソードが紹介されている(P200)。これは知らなかったな。

1996年12月のハケット初来日の時に、マクドナルドはサポートメンバーとして一緒に来日した(P131)。その公演を友人の画家Iが観に行って、僕はその後ビデオソフトを入手した、と言う記事を以前の本欄に書いたことがあるが、このIが、上記世田谷に住んでいたI君だ。その頃からもだいぶ時間が経ってしまったが、多分この先もずっと、プログレを聴き続けるのだろうな。

今の時代は、不寛容で差別的な格差社会ではあるが、少なくとも好きな音楽を堂々と聴ける(P207~8)。そして僕のような”メロトロンフェチ”が誕生するには、1967~1975年に10代を過ごさなければならない。しかも、レコードを聴ける環境が整った先進国で。そういうことを考えると、本書を読んで大いに共感できる自分というものは、いくつもの幸運な偶然が積み重なった上にいる、と言うことが良くわかる。

この偶然に感謝、だな。

 

 

フィリップ証券の商品CFDを試す。

同証券はシンガポールに本拠を置く証券会社で、日本でも特徴的なサービスを提供している。

今回は、ニックさんのTurn Trading社と提携し、同証券に口座開設しているトレーダーの行うトレードについて、同社がコーチングしてくれる、というサービスを開始したらしい。

「なくて七癖」というが、トレーダーは自分の気付かない癖(と言うか、特性)を持っているものだ。曜日や時間帯によっても、トレード成績は異なるはずだが、自分でそれを見極めるのは難しい。そこで、信頼できる機関や個人にコーチングしてもらう価値が出てくる。ひょっとしたら、自分の気付かない弱点があぶり出されるかも知れない。

このサービスは、MT(メタトレーダー)5の機能を使用して行うようだ。同証券でMT5を使用してトレードするのは、FXとCFD。そこで取り敢えず、デモ口座を開設し、商品CFDを試してみることにした。

MT5は、ロシアのメタクォーツ社による有名なチャートソフトで、僕も名前だけは知っていたが、実際に使うのは初めて。まだ使って2日目だが、使い勝手は非常に良い。注文の仕方もシンプルで、何度もクリックする必要はない。短期トレーダーに人気のあるわけだ。

同証券は先物も扱っているが、残念ながら取引ソフトはMT5ではなく別ソフトを使っているので、Turn Trading社のコーチングを受けるなら、FXかCFDを選択するしかない。そこで僕は商品CFD(XAU/USD  ロンドンで行われているドル建て金現物取引を参照市場とした差金決済取引)を始めることにした。前記のように、しばらくの間はデモだ。

チャート描画は非常にスムーズ。そりゃそうだ、いつも参加している大阪金相場とは、参加者の数が違うのだろう。

証拠金は大阪金ミニの半分くらい。レバレッジは20倍で、FXより保守的だ。僕が普段やっている取引がいかに高レバレッジかがわかる。現市場がロンドンなので、日本が祝日のときでも原市場は動いている(つまり取引ができる)。また、ほぼ24時間動いているので、値の付き方が大阪金よりスムーズだ。昨日(5/27)の大阪金など、日中取引の引け値と夜間取引の寄付きとの間(1時間15分)に28円ものギャップがあったが、こういうことは起こらない。

資金効率の良さでは大阪金先物に軍配が上がるが、これは言い換えれば、利益だけでなく損失も大きくなる可能性を示す。

当面は大阪金と商品CFDの併用になると思う。

 

 

 

『作家の値うち』(飛鳥新社 刊)福田和也版と小川榮太郎版の読み比べ。

本書は我が国の主要な作家を、エンタメ系と純文学系に分類し、各作家の主要作品をそれぞれ100点満点で採点したブックガイドである。福田版は2000年4月、小川版は2021年12月の刊行だ。

僕は福田版を2000年5月に買ったのだが、その時すでに4刷。この手の本はそれまで目にしたことが無かった。僕に限らず、本書を手にした多くの人が同様に思ったのだろう。しかし考えようによっては凄い本である。何しろ、有名作家のベストセラー作品でも、「29点以下(人前で読むと恥ずかしい作品)」にランク付けされているものもあるのだから。

福田版では、船戸与一の諸作品に対し「20点以下、測定不能」と言う殺人的に低い評価を下している。しかしこの後、船戸作品は直木賞を受賞する(『虹の谷の5月』)。僕はこれを見て、作品に対する評価なんて主観的なものだなぁ、と言う感覚を持ったのだが、実際は福田版に対して、もっと生々しい業界の反応があったようだ。小川版には「福田版刊行当時、福田氏への異議申し立てはほとんど文壇から上がらず、その代わり多くの作家や編集者が、福田氏を忌避し始めた(P13)」と書いてある。

表立って声高に批判するとかえって目立つ。そうではなく、福田氏の周りから静かに人がいなくなったのであろう。本当のことを書くと友達が減っていく、と言うのはどこの世界でも同じのようだな。

僕は福田版についていたアンケートに「このブック・ガイドは年度版にして、毎年、その年に発表された作品に対し、同様の方法で採点し発表してほしい」と書いたが、文壇にはそのような意見を歓迎する動きはなかったようだ。

ところが突然、昨年になって、小川版と言う続編が出版された。もちろん小川は、福田版の存在を知っていたのだろう。飛鳥新社から執筆依頼があったとき、かなり迷ったようだ。最終的には執筆することになるのだが、福田版の体裁・形式を踏襲しつつ、作家や個別作品に対する評価記事をより詳細にすることで、収録作家数は福田版と同様100人であるのに、本自体の厚さは1.5倍くらいある。それだけ丁寧に書いてあるともいえるが、中には採点不能やマイナス評価まであり、この辺は読者サービスと言うか、読者に対して、色々な意味で興味を持たせる効果はあるかも知れない。収録された現役作家も、福田版と言う先例が既にあり、免疫も十分だろう(100人中ほぼ半分の49人が福田版と人選が重なる)。

僕が過去の本欄で取り上げた、村上春樹や又吉、柳美里西村賢太等ももちろん本書に収録されている。

読書意欲はあるが、時間の限られる人間にとって、本書(福田版、小川版)は、各作家の特徴と、当該作家の作品で、まず読むべきものを端的に示してくれる。こういう本が読めるのも、本好きにとっては嬉しい限りだ。

『コロナ後を生き抜く 通説に惑わされない投資と思考法』(馬渕 治好著 金融財政事情研究会 刊)読了。

最近はCDA関連の仕事で忙しく、前回の記事から大分日が開いてしまった。

その間に、大竹センセイの行動経済学の本など、読んだものもあるのだが、如何せん大竹本は発行から時間が経ちすぎていた。この手の本は、使われている資料など、あまり時間が経っていると新鮮味が失われ、読む気がしなくなってくる。その意味では今回取り上げる本は、読む時期としては、ギリギリセーフと言う感じだろうか。発行は2020年12月。オミクロンの大流行やウクライナ問題より前の発行なので、若干時代を感じるが、今ならまだ読める(読んで違和感はない)。

本書は表題のごとく、様々な通説に対し、著者独自の視点から異論を展開している。面白かったのは、2020年3月の株価の暴落についての著者の解釈だろう。

誰もが、この時の株価暴落の原因を「コロナ」と断定している(P50~51)。しかし馬渕は、この時の暴落の主因は「コロナ禍」というブラックスワンではなく、2匹の灰色のサイだと言う。最初の灰色のサイは、2020年3月時点ですでに極めて割高になっていた米国株価(P55~56)、2匹目は、すでに2019年時点で企業収益が悪化していたにも拘わらず、いつ下落してもおかしくなかったのに、米株上昇に吊り上げられていった日本株、だ。

ちなみに「ブラックスワン」とは「想定外の出来事(P47)」。「灰色のサイ」とは「誰もが知っている要因」を指す。「サイが灰色なのは当たり前だ(P55)」。つまり、前々から存在は知られていたが「そんなこと知っとるわ」として軽視されていた要因が、コロナと言う引金が引かれたことによって大暴れしだしたのが2020年3月中旬までの株価暴落(あくまでも「本尊」はサイ)。そして同月下旬以降の日米株価の急速な戻りは、二匹のサイが暴れ終わったから(つまり、上記の要因が解消されたから)、となる。この解説は腑に落ちた。この時の暴落を「コロナのせい」と決めつけてしまうと、まだ「コロナ禍」が消え去ったわけでもないのに、現在の日米株価が既に「コロナ禍」前を上回ってしまっていることについての説明がつかない。

それから、株価指数先物などをやっている向きには、PBRから見た絶好の投資タイミングなども示されている(P124)。わかっている点もあるが、再認識させられる点も多々ある。そんな本だった。

著者略歴を見ると、日経新聞のコラム「十字路」にも書いているという。日経は面白い新聞ではないが、このコラムは読む価値はあった。本書も目立つ本ではないが、くだらない投資本の何倍も読む価値はあるように思えたな。