面白かった。本書を知ったきっかけは、治験について書いている、あるブログだ。
以前本欄に書いたように、僕は2年前に、長年続けた国家試験受験講師を辞めたのだが、その間、講師業と相場道を突っ走ってきた。わき目も振らずに突っ走ったお蔭で、FIREという用語の意味するところも知らなかったし(こういうタイトルの本があることは知っていたが、読んだことも無かったので、当然、その意味は知らない)、職業としての治験の道があるなんてことも知らなかった。
ここ2年で、今まで未経験の分野で、自分でも経験してみたい、と思ったことの一つにこの治験、というものがあったのだが、何社かのHPを見て、メールも配信されるようになって感じるのは、やはり本書に記載があるように、年齢的な問題だ。還暦過ぎでも対象になる治験はかなり少なそう(元々、対象が高齢者である薬は除く)。
特殊な形だが、治験もボランティアの一つと言える。うーむ、今年中に一つでも参加できるかなぁ。
ところで本書だが、「はじめに」を読んで、早く本編が読みたくなった。
本書では主に、筆者の体験した国内治験の実例が2つ、海外治験の実例が1つ載っている。それと、治験参加者の様々な生態。予想通り、参加者のほとんどすべては、カネのために参加する。実施形態からして、カネはないが時間だけはある(したがって、まともに働いている参加者は少ない)健康な20~40歳くらいまでの男性がほとんどだ。
臨試協(臨床試験受託事業協会)というものも本書で初めて知った。一度治験を受けると、その後4カ月を経過するまでは他の治験に参加できない。しかし、物事には抜け道もあるようで、臨試協に加盟していない医療機関による治験、というのもあるらしい。
本書にはその実態も書いてあり、これがまた面白い。しかし、我々が普段服用している薬が、このような経緯で実用化されるのか、ということがわかり、勉強になる、と同時にあきれた。
最後の章で、筆者は治験の甘い罠から逃れるため、ついに観念してハロワに行く。その後どうなったかは読んでもらうしかないが、本欄をここまで読んだ人なら、大体想像つくよな。