「孤立社会が生む新しい病」という副題がついている。
ゴミ屋敷のことはニュース報道などで時々目にするもで、イメージとしては分かり易かった。しかも僕の部屋自体も、決して綺麗な方ではないので、まぁ、オレもこのままいけばゴミ屋敷に近い状況になるかも知れないな、と簡単に考えていた。しかし、本書を読んで、ゴミ屋敷のレベル感は僕の部屋とはとても比較にならない、ということがわかった。「上には上がいる」とはよく言ったもので、僕の部屋のゴミ散乱レベルなど、自分で言うのも何だが、ひよっこレベルである。立派な? ゴミ屋敷と言えるには、ションペットや大爆弾(これらは、詳しく説明しないが、その語感から何となく察しが付くだろう。詳細はP34~42)は必須アイテムである。僕の部屋にはこういったものはないし、なにしろ床板が見えるようではダメだ。
ということで、本書は僕から見て、相当な上級クラスに位置する、まさに「上級国民」が現実のものにしてしまったゴミ屋敷を、普通の部屋に戻そうとする戦士たちの奮闘記である。しかも、ただの奮闘記ではなく、ジャーナリストである筆者が、ションペットや大爆弾と格闘する中で見えてきた現代社会の病ともいえるものを、リアルな筆致で著している。
随分と茶化した書き方をしてしまったが、本書に書かれている内容は深刻なものである。しかしそれを爽やかな筆致で描いている。僕の読後感が深刻なものになっていないのは、笹井というライターの力量に依るところが大きいと思う。
ゴミ屋敷に陥るのは、男女を問わず、独居・独身者が多いという。筆者は解決の糸口として「ゆるやかなつながり」を持つこと、というある大学教授の言葉を引用している(P192)。確かに、バブル崩壊以降、就職氷河期や個人情報保護の流れ(僕はこれを「個人情報過保護」だと思うときが時々ある)が強くなり、今回のコロナ禍がそれに追い打ちをかけた。オンライン化が人間関係からの撤退に繋がり、それがゴミ屋敷の一層の増加につながる。この流れは今後も強まっていくのではないかと思う。心配だ。
ところで、こんな読後感を書いている、ということは、お前の原稿は仕上がったのか? と思っている方もいようが、半分終わった段階である。だから気が大きくなって、ブログを書いているのだ。予定では、28,29日で残りの半分(医療と年金)を仕上げ、31、1日辺りで官報も踏まえてチェックし、編集の方に送る計画だ。もう少しだ。