大分前に購入した本で、一度通読したのち、ちょこちょこと読んではいた。でも、ちょこちょこではダメだな。何年振りかで読み直した。
相場に関する「金言」というと、古今東西の相場格言を並べた本、という印象を持つかも知れないが、そこは輝太郎氏、ちょっと異なる。
一例を挙げよう。
・人の行く裏に道あり花の山
・まだはもうなり
こういうものを「役立たず」「人を馬鹿にしている」と切って捨てている(P12~3)。ここを読んで、この本は読む価値がある、と思ったね。
では、同氏が考える、役に立つ格言とは、どういうものか。例えば以下のようなものだ。
・片玉2分の1 雑音無視 5%逆行注意(P13)
これは立花義正という無名の相場師の言葉として紹介している。そして後のページで、この相場師の人となりと、上記格言を実行して、10年間で2億の資産を築いたことが紹介されている。
本書には立花氏の他にも、一銘柄の売買だけで生活している人の話(P54~6)など、無名の相場師の具体的な方法論が書かれている箇所が出てくる。
とにかく具体的な技術論なのだ。どうとでも意味がとれる抽象的な格言集とは一線を画している。
投資と投機の違いを述べた個所(P96~7)では「最良の投資は最も投機的である」(北浜金言)との結論に達しているが、輝太郎氏以外でこういうことが書いてある書物に出会ったことはない。
本間宗久の言葉を手掛かりに、ナンピンの具体的な方法論を伝授する箇所(P99~104)は、分かり易い。ナンピンは絶対ダメ、という現実離れした指南書には無い説得力である。
「意見を聴くなら(自分より相場を知っている=僕の補足)一人だけ(相場古言)」のところで出てくるエピソードは、輝太郎氏の人となりが垣間見える。
本書の初版は1983年。僕が購入したのは1995年発行の、第8刷だ。本書も最近は大きな書店でも見なくなった。いつだったか、本欄で「輝太郎氏とは、電話で一度だけ話をしたことがある」と書いたが、こう言う本を読むと、出来れば直に会って、相場について色々な話をお聴きしたかった、という思いが込み上げてくる。