問1
業務災害に該当するか否かを判断させる問題。受験生はある程度の準備はしていたんじゃないかな。この手の問題は先ず、被災したとき、この労働者は何をしていたのか、をみて行く。これによって、業務遂行性を判断できる。この観点から選択肢を見ると、Aは、事業主が定めたもの「以外の、自主的な」運動。Bは、「Cに代わってのBの運転(これをしないとBは業務を遂行できない)」。Cは、業務に引続き長く続く会社の慣習。Dでは会社の指示のない就労(会社は被解雇者の事業場立入禁止の仮処分を裁判所に申請中である)、Eは、ハチの巣近くでの現場作業、であり、ADの2つは、業務遂行性を肯定できない。後は選択肢の文章表現と照合して判断できる。それほど難しくはないだろう。ちなみにDは以前、自分が制作していたヒューマンのテキストに一時期掲載したことがある。
問2
簡単。Dは「裁量により〜できる」ではなく「職権で〜決定しなければならない」。
問3
個数問題であり、なおかつ、アフターケアという、受験生にはほとんど馴染のない部分からの出題が3肢ある。アが×、イが〇までは判断できても、ニを判断させるのは厳しい。解けなくても仕方ない。ちなみに以前の上級クラスだったと思うが、アフターケアの話をサリン中毒のアフターケアとの関連で話したことがある(地下鉄サリン事件では多くの通勤災害が認められたので)。
問4
これも難しくはないだろう。労災保険の公務員関係の適用は、現業の非常勤地方公務員だけ、と言うのは勉強していたはず。したがって、Aがまさにこれに該当し「適用される」ので×。Bの身分は国家公務員・Cは国家公務員なので、ともに労災法は適用されない(国家公務員災害補償法の適用となる)ので×。E(地方公務員だが常勤職員)は勿論適用されないので×。正解肢のDは基本事項。
問5
簡単。Bを間違える事はないだろう。Aではまだ合理的経路を逸脱しているわけではない。CDも自明。Eに関し「概ね月1回以上」往復行為が繰返されていれば、反復継続性あり、と判断する事は話したと思う。
問6
Bは2015年の「フォーカスシステムズ事件」の最高裁判決に関連する出題。労働者が使用者の不法行為によって死亡し、遺族が損害賠償を受けるにあたり、保険事故発生時と受給確定時との間でタイムラグが生じ、その時間分の遅延損害金も発生するとき、会社が払う損害賠償額の算定にあたり、遅延損害金を除く元本(実損額)と保険給付額とを相殺する、と言うもの。判決当時ちょっとした話題になり、確か中日新聞にも掲載されたと記憶している。他の選択肢は、少なくとも正誤の判断はできるだろう。Aでは「積極損害」「消極損害」という語が出てくるが、さすがにこの説明で引っ掛けてはいない。Cは記載の通り、保険給付を行う前に過失相殺をする。正解肢のEは明らかにデタラメ。
問7
C〜Eは普通に学習していれば判断できただろう。しかしAB(ともに判例から)の難易度が高いため、全体として解きにくい問題になってしまった。Aは、土建会社に日雇人夫として雇われていた夫の死亡に付き、その妻が行政機関の決定を待つことなく、直接裁判所に国を相手として保険給付の請求を起こした事件。抽象的に発生している請求権は、行政機関の支給決定を経て初めて具体化される、というもの。本肢は〇だが、若干読みにくい。Bは労災就学援護費の不服に関する設問。これに限らず、社会復帰促進等事業から支給されるものは、保険給付そのものではなく、サービス、と言う考え方が根付いているようだ。つまり、厚労省は権利ではなく恩恵的なもの、と言いたいようだが、現場の裁判実務では、本肢のように「抗告訴訟(行政機関の公権力行使に関する不服)」として扱われている。まぁ、そうじゃないと被災者側は救われないだろう。本肢は逆の趣旨が書かれているので×。
ところで、今日は行政案件で豊田市に行って来ました。9月に続き、2回目です。昨年は津や四日市など、三重県方面が多かったのですが、今年は三河地方が多い。内容は受験案件ではありませんが。
もうじき合格発表です。本試験の検討も、この頃までに終わりたかったのですが、大幅に遅れてしまいそうです。ま、僕の来季の大原での出講は2月からなので、1月早々に終わればいいな、と言う感覚で進めて行こうかと。