図書館でたまたま手に取って、面白そうだと思った。理由は、単純に、僕の好きな曲が割と入っていたからだ。
書名の通り、洋楽の歌詞を解説している本だ。この手の本には英語の先生とかが言葉の解説をしながら書いているものもある。そういうのも悪くは無いのだろうが、著者はベーシストでもあり、より音楽的な内容を含んだものを、作品の背景も含めて書いているので、楽しんで読める。
本書は、全6章からなり、章ごとに次のテーマが設定されている。
1 悲しい恋
2 戦争・圧政
3 事故・災害・老い・死
4 貧困・犯罪・投獄
5 現代社会の悲劇
6 ドラッグ
、、、何とも凄いな。
ブログでは断続的に、本書に出てくる曲の中から、1章から順に僕の好きな曲や、思い出のある曲を選んで書いてみたい。
1で僕が紹介するのは、キング・クリムゾンの『レターズ』(P43)。
妻帯者と不倫関係にある女が、相手の妻に悪意に満ちた受胎告知の手紙を送る。受け取った妻は、失意に喉を詰まらせ、やがて夫に手紙をしたためるが、その手紙には、自分がこれから行おうとする、誇り高き死の決意が書かれていた、というもの。
これがアメリカのバンドなら、茶化してしまうか、あるいはグレン・クロースの「危険な情事」のようなホラーまがいになるのだろうが、そこはフリップとシンフィールド、恐ろしくも格調高い物語に昇華させている。そういえばクリムゾンは現在、来日公演を行っている最中だが、近年のコンサートでは、この曲がセットリストに入っている。聴いてみたいものだ。
次は、ポール・サイモンの『恋人と別れる50の方法』(P24)。
こちらは「彼女と別れたがっている男性が、旧知の女性にアドバイスを求める」という、まぁ、僕が思うにあまりなさそうな設定である。本書によると本作は、サイモンが最初の妻ペギーと離婚した後に書かれたらしい。その割には、この曲に50通りの別れ方が具体的に書かれているわけではない。結論を言うと、サビの部分にあるように「とにかく逃げる」「そうすれば自由になれる」。
作者は、これでは実際に別れ話に悩んでいる男性の参考にはなりそうもない、と書いているが、そんなこともないだろう、と思う。逃げれば時間が稼げる。そして、時間が人々を癒す、と歌ったのはローラ・ニーロだったっけ。