Rocco's log ~プログレ好きの警備員 trader with 社労士~

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『自衛隊協力映画』(須藤遙子 著 大月書店 刊)読了。

数年前から読みたいと思っていた本。やっと読めた。

本書は、著者が2013年に、横浜市立大学に受理された博士論文を下敷きに、加筆修正したもの、と「あとがき」にあるように、元は学術論文である。

本書を読もうと思った動機は、『自衛隊協力映画(協力映画)』として分析の対象となっている作品(本書第Ⅱ部掲出)全32作の内、11作を観ている、ということだけだからではない。個人的に怪獣映画作中での自衛隊の協力が、平成ガメラシリーズの登場によって、それまでとはガラッと変わってしまったかのような印象を持っていたので、そのことを(怪獣映画全体の中で、時系列的に)確認できるかも知れない、と考えたのだ。そしてその考えは大方当たった。

本書第Ⅱ部第4章(『ゴジラ』シリーズの自衛隊)及び第5章(平成『ガメラ』の衝撃)を中心に、印象的な記述を紹介していきたい。

まず、自衛隊協力映画が平成ガメラ以後と前とで、何が変わったのか、であるが、本書ではそれを一言で表現している。それは「リアルな自衛隊」(P124)だ。平成ガメラの第1作『ガメラ 大怪獣空中決戦』(1995年)では、福岡に上陸したガメラに対し、自衛隊は当初、何の攻撃もしなかった。「攻撃は⁉」の声に自衛官がこう語る。「武力行使が認められるのは、防衛出動の場合に限られています。その場合、相手による攻撃が行われなければ、こちらが攻撃することは許されない」(P127)。僕も劇場でこのセリフを初めて聞いたとき、新鮮な驚きと感動を覚えたことを、今でも忘れない。従来の怪獣映画では、怪獣に対峙する戦車(大体がミニチュアだ)がどこからともなく出てくるが、簡単に怪獣に踏みつぶされたりする。こういうのに慣れていた世代としては、本作での自衛隊の実写映像と、法律に裏打ちされたセリフは確かに衝撃的だった。しかし、衝撃を受けたのは、僕のような一般のファンばかりではなかった。

P116には「劇場で『ガメラ 大怪獣空中決戦』を観たあと、衝撃と悔しさでしばらく立ち上がれなかったという手塚は~」という記述がある。手塚とは、2002年公開の『ゴジラメカゴジラ』の監督、手塚昌明である。本作公開の時点では、平成ガメラシリーズ全3作は完結している。この3作の内、最高傑作に挙げるファンも多い『ガメラ2 レギオン襲来』(1996年)は自衛官が主役である。それもあってか、本作では女性自衛官を主人公に設定し、「機龍」という生体ロボットを操縦させ、オペレーターとしてゴジラと戦うのだ。

以上みてきたことは、本書記載のごく一部に過ぎない。しかしこれだけでも、自衛隊は「善」に加担する、法律に則った組織である、という点が、近年、さらに強調されていることがわかる。でも、何を「善」とみるかも時代によって変わるであろうし、法律も、改正や解釈の変更で、その役割が変わることもある。無批判な同調は怖い。自衛隊協力映画は、一般の劇映画としてストーリィを楽しむためのものではあるのだが、知らないうちに一定の傾向への賛同者になってしまう危険もはらむ。現在の映像技術や、自衛隊の細部にわたる「協力」は、そのようなことを容易にさせてしまう可能性もあるかも知れない。それほどまでに上手に協力している、と言うようには考えたくないが。

本書を読むとそんなことまで思ってしまうよ。