読了と言っても、全部読んだわけではない。こう言う本は小説などとは異なり、最初から順に読んでいくようなものでもないしな。
良くできた本だ。表紙の人食いザメのアップ画もインパクト充分だ。帯には「時には便器の中からヤツは襲い掛かる‼」とあるが、このキャッチを読んで、バカらしいと思うか面白そうだ、と思うかによって、その人の人となりがわかるな。
便器の中からサメが襲い掛かるなんて、想像しただけで楽しいじゃないか。でも、ケツ食われたら痛そうだな。
とびらを見ると書名が印刷されているが、サメ肌調の紙質がまた良い。更に、本を閉じた状態で、背表紙とは逆の方から見ると、何か、ムラと言うか、シミのようなものが見える。この状態で本を少しひねると、、、これはお楽しみ、だな。目次の最後にある「注意」も遊んでいる。
サメ映画の紹介・評論本である以上、ベースとなるのは、どんな映画をサメ映画と言うのか、その定義だろう。これについて著者は「サメの存在をメイン(サブ)テーマに含む長編の実写創作物であり、かつ、映画配給会社の手を経た上で、劇場公開・テレビ放送・ソフト化のうち、少なくとも1つを満たした作品」と定義している(P4~5)。後段の定義を追加したのは、アマチュアの動画投稿と明確に区別するためのようだ。
ところで、僕は本書で紹介されているサメ映画を2本しか観ていない。「ジョーズ」(P18~22)と「ジョーズ2」(P25~7)だ。前者は改めて言うまでもないだろう。本書でも「サメ映画の原点」として紹介されている。「サメ映画」の範疇とは関係なく、まだ観ていない人は必見だな。スピルバーグは本作より前に、テレビ映画として「激突!」を撮っているが、このとき既に、その後の「ジョーズ」や「ジュラシック・パーク」に通じる、スピルバーグの天才が現れている。
「ジョーズ2」の監督は、ヤノット・シュワルツ。でも、本作はあまり印象はないんだよな。シュワルツ監督作品としては「ある日どこかで」(サメ映画ではない)が出色だ。シュワルツが来日したとき「あなたは日本では『ジョーズ2』より『ある日どこかで』の監督として知られている」と紹介され、満足そうな笑みを浮かべていた、とどこかの記事で読んだ記憶がある。
著者は想定していないかも知れないが、この手の本は、紹介されている映画のタイトルを見る楽しみ方もある。その昔、新卒時の就職活動で、映画業界を就職先の候補の一つとして選択したからか、僕は映画のタイトル付けに興味があるのだ。例えば「13日の金曜日」が公開されたとき、必ず「14日の土曜日」や「12日の木曜日」と言うタイトルの映画が遠からず出てくると思ったが、その通りになった。次に「タイタニック」のような話題作は必ず「○イパニック」のようなピンク系作品が出てくると確信を持っていたところ、そのようになった。外したのは「ランボー」。この後「ランボー者」と言うタイトルの作品が作られようとは予想していなかった。まだまだだな。
本書でも「ジュラシック・ジョーズ」(P30)、「ダブルヘッド・ジョーズ」(P128)、「フランケン・ジョーズ」(P178)など「何だこりゃ?」と思うようなタイトルの作品が幾つか(幾つも?)収録されている。中でもすごいのは「デビルシャーク」(P171)。本作の紹介文中にリンダ・ブレア(「エクソシスト」に主演した女優)の名があったので、僕は、サメ映画にも出演してるんだ、と思いながら読んでいたら、なんと、作中の登場人物の名が、あのリンダ・ブレアと同姓同名(もちろん意図的だろう)。興味を持ったので調べてみたが、観ようという気は起きなかったな。
本書を読んで、観たくなった作品は「シーフォース 戦艦インディアナポリス」(P50)。この作品は「ジョーズ」にも挿話として登場したインディアナポリス号事件での、マクベイ艦長に絡む歴史ものらしい。同艦長はこの事件の責任を負わされ、後に自殺したが、「ジョーズ」を観てこの事件に関心を持ったハンター・スコット(当時12歳)の研究が、後にクリントン大統領によるマクベイの名誉回復にまで繋がる。僕も「ジョーズ」本編でクイントがこの事件について語るシーンは、強烈に印象に残っている。「シーフォース~」の前に「ジョーズ」をもう一度観るか。