Rocco's log ~プログレ好きの警備員 trader with 社労士~

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『正しい恨みの晴らし方』(中野信子 澤田匡人共著 ポプラ社刊)読了。

つまらない本だった。いや、タイトルから想像するほど面白い本ではなかった、と言うべきか。本書の副題には「科学で読み解くネガティブ感情」とあるが、これをメインタイトルにした方が、本書の内容にふさわしい。でもそれじゃ売れない、と編集者は思ったんだろうな。

また、本書の裏表紙には「ネガティブ感情をコントロールできれば、自分の力をより発揮できる!」とある。しかし僕は、自分の力をより発揮したいと思って、本書を手に取ったわけではない。手っ取り早く、効果的に恨みを晴らす具体的な方法(証拠が残らなければなお良い)を知りたかっただけなのだが、本書には書いてなかった。考えてみても、そりゃそうだろうな。そうなってくるともはや犯罪の指南書になってしまうからな。

と言うことで、僕は無いものねだりをしていた訳なのだが、それを差し引いても本書がつまらなかったのは、結果的に僕には、そこまで恨みを募らせるような人間がいない、と言うことなのかも知れない。

読後に、自分は何人くらいの人を恨んだことがあるだろうか、と自問自答してみたが、60数年の人生で、だいぶ基準を甘くして、せいぜい4人前後。全て男だ(女は僕にとってむしろ恐れの対象だな)。次に、こいつ等がいなかったら自分の人生が変わっていたか否か、を考えてみた。おそらく多少は変わっていたと思う。でもそれは、入った学校とか、就職した会社とか、そういう類だ。僕と言う人間の大筋が変わった訳ではないと思う。

 

しかし二人の著者とも(きちんと数えてはいないので印象になってしまうが)、特に澤田の方に「引き出し」が多い(中野の方にも、それなりにある)。「アメリカの誰々と言う研究者が言うには、、、」と言う表現が随所に出てくる。ま、この分野の先行研究は欧米に多いので仕方ないことなのだろうが、本当にたくさん出てくるのだ。こういうのを知りたい読者には良いのかも知れないが、僕にはそういう気はないので、食傷気味になってしまう。

本書では「心理学の視点から」とある章は澤田、「脳科学の視点から」とある章は中野が書いている。その中の4章「正しさにこだわる人たち」は心理学の視点、すなわち澤田の章だ。ここでは「同調圧力」についての批判的分析が展開されている(P102)。また、5章「正義と言う名の麻薬」は脳科学の視点で書かれているが、ここで中野は、周囲と調和していない人間を危険分子とみなして制裁の標的にする。これが日本の企業や学校でのいじめの根っこにある構造だとする(P122)。この辺は非常に分かり易かったが、いじめた奴に効果的な一発を食らわす方法、については、、、書いてない。

最終章は二人の対談。この手の対談はぬるま湯的になりがちだが、それは仕方ないか。この中で中野は「中学時代が一番苦しかった」(P234)と書いている。濃密な中学校時代の友人関係の中で、自分の異質性を自覚し、協調性が無い、利己的と言う評価をもらった。それによる咎めを回避するために、彼女は学校の成績に逃げた。つまり、誰からも文句を言わせない成績を収めたのだろう。これに対し澤田は、中野のように成績に逃げられない多くの人を思う。澤田は最後に「(大きな満足を得ようとするよりも)小さな満足を積み重ねることが、ずっと大切」(P239)と語る。だが、ここまで読んできた結論がこれかよ、と言う思いも、強く感じたな。(敬称略)