Rocco's log ~プログレ好きの警備員 trader with 社労士~

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『巨人論』(江川卓 著 SB新書)読了

NPBは、注目選手の出場する試合以外、あまり観なくなったが、江川の現役時代はよく観ていた。ちょうど僕の学生時代から社会人になりたての頃だ。

それよりも前、子供の頃は、TVのプロ野球中継と言えば、巨人戦しかなかった(江川があれだけ巨人入団にこだわったのも、そういうことから受けた影響があったのだろう)。でも、この頃はライバルチーム・阪神の江夏が凄かった。本書でも、江夏の年間401奪三振(1968)は絶対抜けない、と江川は語る(P105)。ちなみに江川の最高は221。これでも十分凄いが。

ところで本書は、全5章のうち4章までが、自身の生い立ちから「空白の1日」、小林とのトレードを経て巨人に入団するまで、及びチームメイトやライバルたちとの思い出話、論評と言った内容だ。時代的には、前記のように僕の学生時代から社会人初期の頃の話が多く、本書の内容には直ぐに溶け込めた。

読んでいて思い出したこともある。僕が学校を卒業して最初に就いた仕事は、あるスポーツ新聞社の校閲の仕事だった。ここはアンチ巨人で有名なところで、特に江川を敵視していた。当然のことながら見出しも、江川を貶めるようなものが躍った。

例えば、江川が鼻血を出して降板したときがあったが、翌日の1面トップは「江川鼻血ブーッ!」(よく考えると、先発投手がアクシデントで降板しただけである)。

もう一つ例を挙げると、後に完全試合を達成する槙原が台頭してきたときは「槙原速い速い 江川時代どんどん過去へ」と言う見出しが1面に踊った(槙原は当時、158キロくらいの速球を投げていた)。これなど、江川を引き合いに出す理由は全くない。ま、それだけ社としてアンチ巨人(とりわけアンチ江川)が徹底していた、ということだ。

こんな時代状況の中で、よく江川は結果を残すだけでなく、我々の記憶にも残る投手となることができたものだ。しかも未だに各方面で活躍している。この辺は彼の人柄のなせる業か。本書を読むとそんなことが感じ取れる。例えば、他選手との関係性の構築。読んでいて、堀内や中畑との関係性の良さはわかる(P27,180他)。しかしさすがに、西本とは微妙だな。本人の中にはまだ、例の沢村賞騒動があるみたいだ。なんせ「立ち直るのに40年かかった(P169)」と書くくらいだから。ところで、この箇所で『江川と西本』という漫画作品が紹介されている。こういう作品があることを僕は知らなかった。本作はタイトルとは逆に、西本から見た江川、を描いた作品のようだ。ぜひ今度読んでみたい。

もちろん本書は、野球の専門家の書いた書籍らしく、随所に専門家の視点からの解説も書かれている(P86~93他)。その中で、佐々木朗希の完全試合について、特異な記録、と江川は言う(P140~2)。それは佐々木が「完全」を達成した同じ試合で、プロ歴代1位タイの19奪三振を記録している点だ。通常、こういう試合になると球数は少なくなるものだが、19も三振を奪うと、必然的に球数は増える。それでも完全試合を達成したことを江川は「稀な試合」と言って評価している。

今でも動画に上がっている全盛期の江川の投球を観ることがある。その凄さは色あせないな。