の解説。解いた人はお分かりのように、非常に基本的で、質の悪い引掛けは殆んど無く、全問正解を十分に狙える。
問1
平成23年12月に改訂された「心理的負荷による精神障害の認定基準について」から。要するに「概ね過去6か月の間に、業務による心理的負荷によって、認定基準の対象となる精神障害を発病しており、その発症が業務以外の心理的負荷や、元々個体側に備わっていたことが要因とは認められない」とされれば、Aでいう業務上の疾病として扱う。ただ、心理的負荷の強度と言っても、個々の労働者によって受止め方は様々である(すぐにへたってしまう人もいれば、鋼のメンタルを持つ人もいよう)。そこで、この強度は、当該労働者の主観的受止めではなく「職種や立場、経験などが類似する同種の労働者がどう受け止めるか」という観点から評価することになっている。よってBは誤り。Cは「強・中・弱」の3段階なので、これも誤り。この部分は改正時の心理的負荷評価表を配布して通常講義で説明したところだが、当時のテキストには未掲載だった(もちろん、19年用テキストには載っている)。実はここがポイントなのだ。僕も以前他社でテキストを作成していたが、その編集方針は少々ギャンブル的だった。僕の場合は「まだ出題されてはいないが、僕ならここは出したい」と思う所は迷わずテキストに載せる(ただし、その箇所は来年出題されるかもしれないが、もしかしたらずっと出ないかもしれない)。これが各科目にあるものだから、テキストは細かくなり、講義は長くなる。これに対し、大原のテキストは見切りが良い(過去に掲載されていない箇所から出題された場合、それを次年度のテキストに掲載することで、今後、同旨の問題が出題されたら対処できるようにテキストを編集する)。優劣(或いは好き嫌い)はともかく、受講生は、テキストの作成(或いは講義)方針にいくつかのアプローチがあるのを知っていた方が良いと思う。その方が、より納得性の高い受験勉強が出来るだろう。
問2
簡単。問題があるとすればC(正解肢)・Eか。前者は介護補償給付の支給額についての設問。ご存知のように、介護補償給付の支給額の考え方は独特だ。だから受験生は、細かいところまできちんと勉強しようとする。しかし出たのは、最も基本的な本則だ。こういう事が時々ある。敵はどこから攻めてくるかわからない。Eでは、⑥ではなく④。費用面は事業主は証明できないだろう。
問3
主に行政庁の権能からの出題。「権能」という語は「ここまでできる」という能力面に重きを置いた語で、限界や範囲に力点を置いた「権限」と若干異なる。この感覚が分かっていればEはおかしいことに気付くだろう。点を取らせるための設問か?
問4
個数問題だが、誤りの選択肢(エ)以外が皆分かりやすく、消去法でも解けただろう。しかし、期間の計算について民法の規定を準用するのは、当然のごとく考えられているので、かしこまって出題されると、却って考え込んでしまった人もいたかも知れない。
問5
正解肢はD。特に問題はないだろう。健保法の傷病手当金と比較すると、D(支給要件さえ満たせば曜日や休日に関係なく支給される点)は同じ。E(賃金、報酬が支払われている場合の調整のしかた)は異なる。
問6
正解肢のEは、例の記憶法(131匹のハチにゴミ)を覚えていれば問題なく解けただろう。Aは「準用」Cは「加重」Dは「再発」についての設問。Cは難しく思う人もいようが、既存障害と新たな障害(加重した部分)は時系列的に異なり、当然、給付基礎日額も異なる点に思い当たって欲しい。Dの「再発」は、治ゆ前の状態に戻ることを指す。治ゆ前ならば、治ゆ後の給付は出なくなる、という発想で。
問7
これも問題ないだろう。Bは「歯科医師」がもっともらしいため「保健師」を思い出せなかった人もいただろうが、そもそもこの給付は、過重労働から来る不摂生の先にある過労死や突然死を予防するためのもの、という原点に思い当たって欲しい。それが出来れば歯科医師で引っ掛かることはなかったのではないか。後半の「栄養指導」は正しい(特定保健指導はこれに加え「運動指導」、飲酒・喫煙・睡眠等の「生活指導」)の3つの指導から成る。Eは「指定病院等」ではなく「所轄監督署長」でもない。