太田利之氏が著した本書の中から、僕にとってなじみのある曲を紹介しているが、今回は「5 現代社会の悲劇」の章。10曲が取り上げられているが、ここでは、グラディス・ナイト&ザ・ピップスの『夜汽車よ! ジョージアへ』(原曲名は「Midnight Train to Georgia」)を取り上げたい。
この曲は1973年の10~11月に全米1位を記録する大ヒットとなった。
本当に良い曲、僕は大好きだ。ただ、本書の「現代社会の悲劇」という、章のタイトルは、この曲に限って言えば、少しオーバーな感じがする。本書では抜けているが、この曲の邦題には上記のように「!」が入る。確かにこの曲は、スターを夢見てLAに出てきた青年が夢破れて故郷(ジョージア)に帰る場面と、彼に付いて行こうとする女性の物語だ。しかし邦題につけられた「!」によって、少なくとも僕の中では、都落ちの悲哀(P191)よりも、彼に付いて行こうとする女性の決意の方をより強く感じる。
都会に出てきたが、夢破れて故郷に帰る若者の物語は、日本でも歌があるし、映画の題材にもよくなる。状況は異なるが、ジョン・シュレシンジャー監督の映画『真夜中のカーボーイ』もそうだろう。
人は人生の初期において接した音楽や映画を参照点にして、その後に接する音楽や映画を判断することがある。僕の場合は、1972年に映画『真夜中のカーボーイ』、1973年にグラディス・ナイト&ザ・ピップスの『夜汽車よ! ジョージアへ』を知ることによって、この種のストーリィに対する親和性を獲得したのかも知れないな。