Rocco's log ~プログレ好きの警備員 trader with 社労士~

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『日本列島改造論(復刻版)』(田中角栄 著 日刊工業新聞社 刊)読了

面白かった。

本書の初版が刊行されたのは1972年。序文は同年6月に書かれている(P9)ので、正に田中内閣成立(同年7月)の直前である。初版は91万部を売るベストセラーになったという。厚生官僚だった叔父の家(僕の家と同じ敷地内で、隣にあった)に、本書があったのをよく覚えている。当時の我が国は、敗戦から四半世紀が過ぎた頃。欧米に追い付き追い越せで、猛烈に工業化を推し進めていたころだ。当然、その歪みとして、大気汚染など公害問題が噴出してくる。著者はこれら諸問題に対し、場当たり的でなく、都市の再配置を通じて都会から地方への流れを生み出そうとしている。

読んでみるとわかるが、とにかく「祖国愛」に溢れた一冊である。これから国を担っていくという、若き日の角栄の気概を随所に感じることができる。また、現代の視点から見ると、新幹線網の主要都市への拡大や本州四国連絡橋など、すでに現実のものとなっている施策が、当初、どのような形で計画されていたのかを知ることができるのも興味深い。

僕が読んだ『(復刻版)』は、今年3月の発刊だ。角栄の娘、眞紀子元外相が「復刻にあたって」という序文を書いている。それによると元外相側から「同書の復刻をお願いした」ことになっているが、そもそもの始まりは、日刊工業新聞社の社長からの復刻の打診のようだ。50年も前に書かれた本だが、躍進著しい当時の我が国の勢いが感じられる。それを追体験するだけでも本書を読む価値はあると思う。

 

もう一つ言いたいことは、先に本欄で紹介した『名言集』(今年2/24の記事)と併せ、角栄本人の魅力が随所に現れている点だ。現状分析や国際比較として細かい数字もたくさん出てくるが、この辺りは「序にかえて」にあるように各省庁の専門家の手を煩わせたに相違ないだろう。だが、単なる数字の羅列に終るような無味乾燥な本ではない。著者の語り口は熱っぽい。しかし、ことは国土開発に絡むことだ。当然、時の政権の政策が本書に書かれていることの実現を目論んでいる、となれば、土地投機は熱を帯びるし、環境汚染も、本書の理想とは裏腹に深刻化する。著者が長期政権を樹立していれば、そのような負の部分についても手を付けられただろう。しかしそれを行うには、政権期間は短すぎた。

 

ところで、本書の版元である日刊工業新聞社だが、僕の通っていた大学のゼミでは当時(40年以上前の話だ)、毎年若干名が同社に推薦され、入社していた。詳しいことは知らないが、おそらく、ゼミの指導教授と同社経営層との信頼関係に基づいたものだったと思う。実際、僕から見ても優秀な人が、多くは記者職として入り、活躍していた。しかし、どういう訳か僕の年は、幹事長としてゼミをまとめていた友人Fが、間接部門で入社したので驚いたものだ。このFから、その後数年にわたり、僕は同社の発行する「チクラグラフ」と言う手帳を貰い、使い続けることになった。この手帳は、常に1週間先を見通すことができる面白い構造だった。結局、僕は社労士になり、社労士手帳を使い始めることになるのだが、「チクラグラフ」はその直前まで使っていたと思う。

それにしても、当時は気にも留めなかった手帳が、いま見返すと宝物のように大切なものに思えてくるから不思議なものだ。