2022 4/14の記事で『マクドナルド&ジャイルズ』について書いた。その時も予告したが、今回はマクドナルド初のソロ作品である『ドライヴァーズ・アイズ』(1999年)について書いてみたい。
正直、本作を初めて聴いたときは、戸惑った。もちろん、この時点ですでに『クリムゾン・キングの宮殿』から約30年が経過していた。時代状況も全く異なる中で、当時と同じ音楽的衝撃を期待する方が間違っていることはわかっていた。それでも、これより3年前、1996年にマクドナルドは、スティーブ・ハケットの来日公演に帯同しており、本作にはハケットがゲスト参加している曲もある。そんなこともあり、往時のプログレ的な音のまとめに少しは期待してしまったが、そういうものはあまり感じられなかった。
以前、音楽専門誌に載ったマクドナルドのインタビュー記事を読んだことがある。おそらく、96年から、99年の本作発表前あたりのものだったか。そこには印象に残る記述があった。なんと、彼はその時、先生についてフルートを習っている、と語ったのだ。『風に語りて』の作曲者で、軽やかで優美なフルートを聴かせてくれているマクドナルドが、まだフルートを教わる必要があるのか、とその時思ったものだ。大言壮語やはったりが幅を利かすロックの世界で、こんなにも謙虚な発言をする人がいるのか。その時のインタビュアーの感想が「真面目過ぎる」というものだった。僕も同感だが、こう言う人こそ、自伝を執筆してほしかった。ファンなら、『クリムゾン・キングの宮殿』以降の音楽活動や思考の変遷をたどってみたいと、誰もが思うのではないか。
しかし、マクドナルドは逝ってしまった。彼を偲ぶには、作品を聴く以外に適当な手段が無くなってしまった。先程「戸惑った」と書いたが、それは『宮殿』や『マクドナルド&ジャイルズ』的な音を想像してしまうからであって、このような「無いものねだり」をしなければ、1999年当時の音楽として十分に楽しめる内容だ。
聴きどころは色々あるが、特に以下の3曲は素晴らしい(数字は曲順)。
6 フォーエヴァー・アンド・エヴァー:ジョン・ウェットンの重厚なヴォーカルが光る、クリムゾン的楽曲。イアンのフルートも聴ける。
8 ストレート・バック・トゥ・ユー:ルー・グラムがヴォーカルをとっている。ギターはスティーブ・ハケット。歌詞も気に入っている。個人的に、聴くほどに良さを感じる曲。
9 イフ・アイ・ワズ:ヴォーカルはイアン・ロイドとあり、驚いた。ストーリーズのヴォーカル。70年代に『ブラザー・ルイ』という曲が全米1位になった(2歳下のいとこがシングル盤を買って、まだ持っている)。当時はかなりのしわがれ声だったが。素晴らしいギター・ソロはピーター・フランプトン。曲はフェイド・アウトで終わるが、このギター・ソロはもっと聴いていたい。
マクドナルドはハケットの「東京テープ」にも参加している。でも本作のように、多くのゲストと一緒に作り上げる形の作品も、もっと聴きたかったな。