Rocco's log ~プログレ好きの警備員 trader with 社労士~

社労士試験、投機関連(大阪金先物が中心)その他諸々。このブログのトレードに関する箇所は、僕の勝手な相場観を書いています。価格も僕の予測に過ぎません。内容の正確さに最善は尽くしていますが、一切の責任を負うものではありません。売買は必ずご自分の判断で行って下さい。また、記事中で氏名の敬称は原則として省略しています。ご了承ください。

『年収300万円FIRE』(山口 貴大(ライオン兄さん)著  KADOKAWA 刊)読了

サブタイトルには「貯金ゼロから7年でセミリタイアする「お金の増やし方」」とある。昨年2月の刊行だが、僕が図書館で借りたのは、6月発行のもので、この時点ですでに6版だ。この手の本がいかに待ち望まれているかが如実に表れているな。

きちんと読んでみたが、頷ける点が多い。良書だと思う。ただ、著者はユーチューバーでもあり、自分のチャンネルへの登録を促す記述もある。勿論、登録するかしないかは個人の判断だが。

本文は5章に分かれるが、第1章に入る前(P2~14)に、本書を読む上でポイントになる事項が書かれている。そこでは「貯蓄率を上げることがFIRE達成に最も必要なこと(P6)」、「物質的なぜいたくではなく、心のぜいたくを満喫できるFIRE(P13)」と言う言葉も。つまり、限られたインカムゲイン(投資からもたらされる定期的な不労所得)の範囲内で、人生を自由に過ごす(P12)ことだ。したがって、大金持ちになる方法が書いてあるわけではない。ここはしっかりわかったうえで読まなければならない。

では各章ごとに見て行こう。

 

第1章 「投資すべき」は「あおり」でも何でもなく統計的に正しい

P42には「日本と他国の賃金上昇率の比較」が載っているが、我が国の賃金水準だけが、1997年と比較して、いまだに水面下に沈んでいることが紹介されている。そして著者は、ここから抜け出すには、株式などの資産を運用してそこから生まれるインカムゲインによって生活することで、この状況から抜け出すことを提案している。ただし、投資対象は我が国ではない。米国マーケットである。

 

第2章 なぜ「年収300万円」でもFIREできるのか

ここではまず、4種類のFIREについて説明(P75)した後、著者は4番目のバリスタ・ファイア が一番実現性が高いとして、この形のFIREを勧めている(P89)。これは「サイド・ファイア」とも言い、セミリタイアと同義と考えて良い。通常なら週5勤務のところを週3勤務にしたり、というものだ。著者がこれをすすめる理由は、資産収入に加えて労働収入も得られるので、FIREに向けて作らなければならない資産が半分で済み、その分、時間の短縮になるからだ。

そしてP90から「年収300万円の人が7年でサイドFIREするためのロードマップ」が始まる。ここは読んでもらうしかないが、最適なのは30歳代までだろうな、と思った。何故なら、半端でない貯蓄率(収入のうち、米株式投信やETFに回す比率)が求められ、なおかつ最初の2年間は「スタートダッシュ」として副業をすすめているからだ(P95~)。相応の気力、体力が必要とされるだろう。

 

第3章 失敗のしようがない「インデックス投資」のコツ

第4章 投資に丸ごと生かす「米国経済」のポイント

ここでは著者が米国株へのインデックス投資をすすめる理由が書いてある。確かにP159にあるような日米株式のパフォーマンス比較を見ると、ほとんどの人は、その差に愕然とするだろう。

また、著者は先物デイトレードのような短期的な投機ではなく、長期投資をすすめてもいる。理由は、本書で紹介しているS&P500の投資期間別のリターンのばらつきを見れば明らかだろう(期間が長くなるほど、平均リターンのばらつきが小さくなることがわかる)。そして投資期間15年以上だと、マイナスは皆無になる(P203、205)。

 

第5章 資産が自動で増える「FIREマインド」とは?

ここでは成功するための心構え的なことを中心に書いてある。

 

タイトルから受ける印象より、ずっと真面目な本で、繰返し読む価値があると思う。しかし僕が読むには遅すぎたな。FIREのような考え方には批判的な向きもあろう。でも、自分がそれでよいと思えばチャレンジしてみれば良い、と思う。僕が講義していたころから言ってきたが、走りながら考えれば良いのだ。ただし著者は、会社での就労そのものを否定したり、そこから逃げろ、と言ってはいない。P125以降にあるように、会社員であることのメリットもきちんと分析している。

僕の今の生活は、著者の分類に寄ればサイドFIRE的なところにいると思う。確かに週3勤務で得る収入と年金収入はほぼ同額。これに株の配当と投機からの収益が加わる(もっともこれはマイナスになることもある)。金銭的に余裕があるわけではないが、時間だけは社労士の受験講師をしていたころに比べると余裕を感じることが多くなった。これに金銭的余裕が加われば文句ないのだが、無いものねだりか。