表紙には「国際競争力ランキング2年連続1位」とある。集計はIMD(国際経営開発研究所)。ちなみに我が国は2022年は34位、23年は35位(P31)。これだけの差があると、もうデンマークは我が国のライバル、とはとても呼べない。むしろ、目標、と呼ぶべきか。しかし、本書を読んでから改めて考えるに、目標、という言葉で彼の国を表現することも適切ではない、と思うようになった。何故かというと、目標というのは、追いつこうと努力や工夫をすることで、追いつくか、少なくとも距離が縮まる可能性がある状況を指す。しかし本書を読んで、努力や工夫以前に、両国民の民族性の相違の問題、と考えるようになってきた。
例えばこういう記述がある。「家事育児は女性が担うという考え方が通用しないのだから、男性は仕事を言い訳に家事育児を放棄できないし、女性は家事育児を言い訳に仕事を放棄できない」(P52)。したがって我が国にはいまだに一定数が存在する「結婚して専業主婦になりたい」とか「ちょっと社会を経験して、寿退社したい」という女性や、「一家の大黒柱として仕事しているのだから、家事育児は妻」という男性には、そのような考え方が通用しない、という意味で「厳しい社会」と言える(P52)。
また、少人数かつプラグマティックな組織で、意思決定も早い(P90)という記述もある。僕も経験あるが、我が国は会議への出席者もやたらと多いし、終了時間も決まってないこともあるしな(P81~88)。
読み進んでいくと、デンマークの成功は、現在の我が国の方法論の正反対を行っていることがわかって来る。例えば「襟は正さなくていい 形式・手続・ルールは要らない」では「仕事の本質は成果を出すことであり、形式・手続・ルールに従うことではない」(P126~8)。なすべきことがなされていれば、スタイルや形式は問わない社会だ。
ところで、トレーダーにとって「なすべきこと」とは利益を上げること。つまり、きちんと利益が積み重ねられていれば、どういう手法でトレードしたか、とか、どのようなテクニカルを使ったか、は問わない、と言っているのと同じだ。どうやら、きちんと儲けているトレーダーにとっては、デンマークは生きやすい国であるのかもな、などと思ってしまったよ。