これは中々すごい本である。絵も文章も、どちらもである。
絵は気持ち悪いし(一部可愛いのもある)、文は何故か関西弁で、これがまた臨場感があり、登場するシロアリやトカゲやカメムシが関西弁で喋っているかのよう(実際は「はじめに」にあるように、筆者が「生きものの立場に立って」書いているわけだが、この人、本書に登場する「生きもの」と一心同体と言っても過言ではない)。
よくこんな本を企画し、カタチに出来たものだ。
いくつか紹介すると、、、。
・アシダカグモ(P76):<好きなもの>ゴキブリ、<苦手なもの>寒さ
「最近は人間に嫌がられ、私らを見つけたら殺虫剤かけるもんがおって、かなわんわ」
と、こんな感じで書いている。
・アカイエカ(P96):<好きなもの>ヒトの血、<苦手なもの>水生昆虫(幼虫(ボウフラ)が捕食される)
「活動時間は、あんたらが寝静まった夜中、耳元でブーン、て。悪いな」「私らも起こしたくないんやが、息の炭酸ガスに反応して、つい近づいてしまうんや」「血を吸わんと産卵できないから、命がけや」
って、あの「ブーン」はやめてほしいな。眠れなくなる。
・トコジラミ(P108):<好きなもの>ヒトの血、<苦手なもの>明るい場所
「ゲストハウスとか、掃除をあまりしない不特定多数が利用できるところで、夜に出てきて血吸って、朝までに元の隙間に帰って行くんや」「餌にありつけなくても、じっと我慢して、2か月は生きていける」
なんて、凄い生命力だな。
裏表紙には、家の中の生きものについて「なぜそこにいるのか」「何をしているのか」など、生きものの正体を解き明かす、とある。僕も本書を読んで、今までの生活において家の中の生きものにかなり寛容だったことがわかった。寛容も度が過ぎるとかえって自己の生存が脅かされ、場合によっては侵略もされかねない。何だか、どこかの世界と同じやな、と思うようになった。これからは、もう少し真剣に対処しなければなるまい。
本欄だけでは、この本の魅力はとても伝えきれない。絵も含め、書店や図書館で実物を手に取って見てほしいな。
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