Rocco's log ~プログレ好きの警備員 trader with 社労士~

社労士試験、投機関連(大阪金先物が中心)その他諸々。このブログのトレードに関する箇所は、僕の勝手な相場観を書いています。価格も僕の予測に過ぎません。内容の正確さに最善は尽くしていますが、一切の責任を負うものではありません。売買は必ずご自分の判断で行って下さい。また、記事中で氏名の敬称は原則として省略しています。ご了承ください。

『資格を取ると貧乏になります』(佐藤留美 著 新潮新書)読了

この本、出てから10年になるんだな。本書出版当時、僕は社労士受験講師として、相当数のコマを、複数の受験校で持っていた。本書については当時から、煮え切らないというか、何が言いたいのか分かりにくいタイトルだな、と思っていた。だが、本は売れてなんぼ。そのためには目立たなくてはならない。編集者からすれば仕方ないのか。

「貧乏になる」とはつまり、取る前よりも貧乏になる、ということを示しているのだろう。だが、『取ったからと言って、直ぐに豊かになるとは限らない』という方がより正確だろう。でもこのタイトルじゃ、多分売れないな。

本書で紹介されている「取ると貧乏になる」資格は、弁護士、会計士、税理士、社労士の4つ。これらに加えて、「点数が上がると英会話が下手になる(P154)」TOEICについても著者なりの論評を加えている。僕は「会計士」を除いて全部読んだが、読後最初に感じたのは、こういうことは、熱心に資格試験の勉強に取り組んでいる人なら、大方わかっていることなんじゃないかな、ということだ。資格試験に合格することと、その資格を使って仕事をし、食っていくことができることは、全く別次元の問題、と言っても良い。

 

僕は社労士なので、社労士の例で話そう。僕は社会人としてのキャリアを、あるスポーツ紙の校閲記者としてスタートさせたが、直ぐに学校職員に転職した。今でも覚えているが、校閲記者の時代、年間休日は84日だった。これは後から知った。こんな基本的で重要なことも知らずに入社したのだ。この求人は学校の就職課経由じゃなかったと思う。次の勤務先(学校法人)では事務職員として入職したが、専門知識を持つ教員の仕事に次第に惹かれるようになった。だが、自分には人に教えられるような専門は無い。そんな中で人事に配属されることになり、しばらくしてから社労士という資格があることを知った。この資格についてはいろいろと調べたが、人事として自分のキャリアを高めていくには取得すべき価値のある資格だと考えられた。でも、法律系国家試験の受験勉強などしたことが無かったので、より身近な一般法で受験できる行政書士試験の合格をまず目指すことにした。幸い、ほぼ予定通りの期間で両国家試験に合格し、社労士事務所への転職も決まっていた。しかし、最後の最後で、実務家から受験講師業に方向転換したことは、以前本欄に書いた。これには学校法人への最初の転職が影響していると思う。自分も専門を持ち、それを教壇から語りたいという気持ちは、労働社会保険の実務家志向とは別に、ずっと抱いていたからな。

なんか、トレーダー(実務家)とトレーディングスクール(或いはトレード教材販売業者)との関係に似ていないか? 考えてみると僕は、社労士事務所に入って実務家として成長することよりも(この過程では当然、顧客企業との様々なやり取りが発生する)、受験講師として素人である受講生に専門知識を伝達する道を選んだ。社労士の存在意義は、実務を通じて企業や個人に貢献することだと考えるが、僕はこちらではなく、受験講師となった。後悔はしていないが、これが社労士本来の仕事ではないという点は認めざるを得ない。

こういう経験をしているので、トレーディングの世界では実務家としてトレードのエキスパートになりたいと思い続けてきた。現在僕は、26カ月連続で月間のトレード収益でマイナスを出していない。トレーダーなら、これがそんなに簡単なことではないのはわかってもらえると思う。でも、だからと言って、その間の手法を教材として売るとか、スクールを運営することにはならない(もしそれをやれば、手っ取り早く儲かるかも知れないが)。手掛ける銘柄が同じでも、手法は局面によって異なるし、メンタルも人それぞれ。自分が目指すべきは優れた実務家(トレーダー)であって、教材の販売者や投資スクールの運営者ではない。

 

話しが逸れてしまったが、資格試験の勉強を始める前にこういった本を読むのは悪いことではない。先述したように、本当にその資格を取得したいなら、本書に多少ネガティブなことが書かれていてもそれほど気にはならないだろう。むしろ却って「ヤル気」に火をつけてくれるかもしれない。ただ、本書は発行から既に10年が経過している。この間、コロナ過やそれに伴うリモート学習の波など、様々な社会的な変化があった。出来れば著者には内容のアップデートをしてもらいたいものだ。